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posted by みっちぃ (管理人)

2013年10月20日

現像ソフトのレンズ補正機能の使い方について

悪天続く〜浅草街景
図1 レンズ補正なし
悪天続く〜浅草街景
図2 レンズ補正あり
【はじめに】
 最近のデジタルカメラ画像の現像ソフトにはレンズ補正機能が付いているものがあります.どのようなレンズでも,画面の中心部分と外周部分には歪みが生じます.また,レンズの中央付近と周辺部分で光量が異なることによって,周辺部分が暗くなってしまうなどという現象が起こります.周辺部の解像力が低下してピンボケが生じたような状態になることもあります.
 レンズ補正機能は,あらかじめ厳密な条件下でレンズの特徴を計測しておき,その結果を考慮して現像時に画像を補正するものです.周辺部の解像度の低下は補正しにくいため,多くの現像ソフトではレンズ歪みや周辺光量の低下を補正する機能を提供しているようです.しかし,その機能は必ず使用すべきでしょうか.本記事ではこの点について考察したいと思います.

  
図3 タワー部比較
【検証】
 前回の記事「悪天続く〜浅草街景」は,SONY α NEX-3とキットレンズのE18-55mm F3.5-5.6 OSSにより手持ち撮影を行いました.スカイツリーは真上から見たとき足元が正三角形で上に従って円形になっています.そのため斜めに傾いて見えるので,もともと構図決めが難しい被写体の一つと言えると思います.それに加えてレンズの特性が影響してくるので,特に歪の大きいレンズを使うとスカイツリーの形が不自然になってしまうことが少なくありません.
 今回使ったE18-55mm F3.5-5.6 OSSも今回のようにワイド域端で撮影した時の歪は少なくありません.掲載の写真を本ブログのビューア機能などで確認いただくと,解像感があるのは中央付近だけで周辺部に行くに従って解像度が低下しているのがよくわかります.また,地平線もわずかに中央付近が上方へ膨らんでいます.そういう特性を踏まえ,スカイツリーの立ち方と地平線の水平方向の不自然さが小さく感じる位置で構図を決めたのが前回の記事の写真(図1)です.こういった条件の写真こそ,レンズ補正機能が有効に思えます.
 そこで,前回の記事と同じ現像条件に加えて,Lightroom 4のレンズ補正機能を有効にして再度現像してみました.その写真が図2です.補正なしの場合と比較してみてどのような印象を感じるでしょうか.私は図2のほうが不自然に感じました.検証するため,スカイツリーのところだけを切り出してタワーの頂点を基準に垂直方向の線を引いてみました(図3).左がレンズ補正機能なし,右がレンズ補正機能ありです.タワーの足元側をみると,明らかに補正機能ありのほうが傾いてしまっていることがわかります.このようにレンズ補正機能をかけることによって,不自然さが増してしまうことがあるのです.

【考察】
 今回の写真は,ファインダー(というか液晶画面)で全体のバランスを確認しながら不自然さが小さいと感じるところで構図を決めてシャッターを切りました.結果的にスカイツリーが垂直になっているような(印象になる)構図になっていたのです.しかしその写真は,レンズの歪みの影響を受けています.歪んだ状態を基準にして構図を決めたことになるので,レンズ補正機能の処理を行うと逆効果になってしまったのです.
 では,現像時のレンズ補正機能を用いることを想定して理想的な写真を得るために,私はどのように構図を決めるべきだったのでしょうか.一つの方法は水準器を用いて水平を基準にすることでした.水平を基準にしたときファインダーには不自然な構図として映るかもしれませんが,それはレンズの歪みのためなので気にすることはありません.後から現像時に補正すればよいのです.
 言い換えれば,水平がとれていない写真に対するレンズ補正機能の適用は逆効果になる場合があるということにもなります.特に今回のように直線で構成されている構造物の場合はその影響がよりわかりやすい形で生じてしまうのです.
 前述したとおり,前もって厳密な条件下で計測されたレンズの特徴情報に基づいてレンズ補正機能の処理が実現されています.そのため,計測時の精度やその結果を用いた画像補正処理の精度によっても,補正結果の仕上がりは大きく変わってくると考えられます.本検証ではAdobe Lightroom 4のレンズ補正機能を用いました.別の現像ソフトを用いると,同じ写真でも異なる結果になる可能性もありえます.

【おわりに】
 本記事では,デジタルカメラ画像の現像ソフトに搭載されているレンズ補正機能の必要性を実例を用いて検証し,撮影条件によっては逆効果になってしまうことがあることを述べました.私個人としては,レンズの特徴はそのレンズの個性として受け入れるべきだと考えており,レンズ補正機能はあまり好きではありません.しかし,建築物のような直線で構成される被写体では歪みが気になることがあるのも事実です.したがって,レンズ補正機能は常用機能というよりは,補正が必要と感じる場合の補正ツールの一つなのだと思うのです.
posted by みっちぃ (管理人) at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 写真など
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