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posted by みっちぃ (管理人)

2011年11月11日

世代別投票格差の是正について再考する1

 世代別投票格差の是正についてこのブログで取り上げたところ,こんな記事を書くべきでないと友達から指摘を受けた.軽く考えすぎだというのだが,議論する前からそのような指摘を受けたのは友人といえども残念だった.まぁ,そういう論調は仕事柄慣れているからいいのだけども.ただ,友達に指摘されて再考の余地があると思うところがあったのも事実.
 再考の余地があると思ったのは,どんな場合に1票の重みをづけ,どんな場合につけないのかということだ.この問題について私なりの考えを持っているが,まだ再考の余地が多く残っているので別記したい.一方,本記事では現状の投票関連の制度に対する疑問点からの考察を述べてみたい.
 たとえば,日本国憲法の改正手続に関する法律では第三条 に「日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。 」と記載されている。この,満18歳という年齢の根拠と年齢による権利の差はどこからくるのか.満18歳ということは,投票日が11月11日だったとする場合,11月12日に18歳になる人(厳密には11日の終わりを持って18歳なるのかな?)には投票権が与えられないということである.わずか1日の差が,憲法を変えるという大きな権利を有するか否かの差になるのである.
 生まれたばかりの乳児からすべての国民が投票権を持つと仮定しよう.1票の重みづけを係数を積算することによって行うものとすれば,改正手続に関する法律に基づくと,投票日において満18歳以上であれば係数=1,満17歳以下であれば係数=0にしているのと同じである.すなわち,すでに年齢によって1票の重みづけをしているのが現行の投票制度だという見方ができるのではないだろうか.
 そもそも,18歳という年齢の根拠は何か.もともとは,民法第4条の「年齢二十歳をもって、成年とする。」に対して「日本国憲法の改正手続に関する法律」が満18歳としたものではあるが,なぜ17歳ではだめなのか.その理由に対する一般的な認識として“人として未熟”というような概念があると思うが,中学卒業後から社会人として働いている者と,惰性で大学に進学して22歳までひたすら遊んでいた者ではどちらが“人として未熟”だろうか.17歳で起業する人だっている.しかも,上記例のようにわずか1日の違いで投票する権利の有無が変わるケースもある.わずか1日の違いで“人としての熟度”が大きく変わるものなのだろうか.では満17歳に引き下げればよいかというと,今度は16歳以下との差が問題になる.
 つまり,権利の有無について年齢による基準を設けた途端に,その根拠に対する矛盾が生じるのだ.私が提唱している「世代別投票格差の是正」は,まさにこの問題に関わってくるものである.すでに年齢による権利の有無を設けている以上は,年齢間(=年齢世代間)の差をもっと真剣に考えるべきではないだろうか.そして,年齢世代間の違いに目を向けたときに目立つのは世代別の有権者数の差なのである.
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posted by みっちぃ (管理人) at 11:12| Comment(4) | TrackBack(1) | 有害電波発信地
この記事へのコメント
法学は互いに浅学ながら…
選挙権、参政権、国民投票の権利、それから酒や煙草を飲む権利から結婚をする権利、運転免許を取得する権利など、法的に年齢制限のあるものはさまざまですが (最近だとポルノに出演する権利なんかにも年齢制限がゲフンゲフン)、法的には「人として未熟」なお子様は、同時にさまざまな保護の対象にもなっていて、いくつかの法的な責任を、お子様ご本人が有さなくてもよいことになっていたりもします。建前としては、そうした権利と保護のバランスが取られているということになっているのでしょう。
0 か 1 かの明確な年齢制限ではなく、何らかの緩やかな係数を適用するような制度にするのであれば、こうした法的な責任からの保護とのバランスを如何にしてとり続けるのかという点も、合わせて議論しなければなりません。

この手の方法論のひとつとして、選挙権などは免許制度として、十分な一般教養のある方であれば年齢に関係なく選挙権を取得できるようにする、法的・社会的な教養に応じて票の重みのグレードを上げられる、といった制度も考えられますが、試験を実施し免許を交付する行政組織の価値観に支配されるという側面もありまして、まぁ、代表民主主義の制度設計も難しいよなと思う次第であります…。
Posted by T.MURACHI at 2011年11月12日 10:42
T.MURACHIさん.コメントありがとうございます.まぁ,おっしゃるように簡単な問題ではないですね.

ご指摘のような「選挙権などは免許制度として、十分な一般教養のある方であれば年齢に関係なく選挙権を取得できるようにする」という考え方については私も頭をよぎりましたが,すぐに却下となりました.“行政組織の価値観”という指摘にも関連しますが,“教養”や“価値観”,知識,思考,知能,技能などというものは,教育者や生活周囲の人間の持つ思想や宗教,道徳観などよって影響を受けることで大きく変わるものです.つまり「何を正しいとするか」は人それぞれ異なるものなのに,誰かの影響を受けて作られた仕組みによってライセンスを与えて投票権の有無を決定しては,もうその時点で民主主義とは言えません.

そもそも,年齢による制限が民主主義において正当だといえる根拠はなんでしょうか.私には,分かるようでわからない問題に思えてきました.確かに,民主主義的な手続きによって年齢制限が設けられたのだとしたら,それは「正当なもの」と言えるのだと思います.しかし,その民主主義的な手続きにおいて,制限以下の年齢世代に投票権はなかったはずです.そのような不平等があるのに,民主主義的に正当だと言えるのでしょうか.
Posted by みっちぃ(管理人) at 2011年11月13日 01:53
> 確かに,民主主義的な手続きによって年齢制限が設けられたのだとしたら,
> それは「正当なもの」と言えるのだと思います.
> しかし,その民主主義的な手続きにおいて,制限以下の年齢世代に
> 投票権はなかったはずです.

選挙権から納税制限が撤廃される以前、高い直接国税を支払えない多くの国民には選挙権がありませんでした。男子普通選挙が導入されるに至っては、大正デモクラシーの影響が大きかったのではないかと思われます。
さらに女性にも選挙権が与えられるまで、女性に選挙権はありませんでしたし、25歳未満の国民にも選挙権はありませんでした。こちらは敗戦の末に導入されたので、日本国内のみを見れば民主的なプロセスとは言い難いでしょうが、欧米ではやはりデモ活動などを中心としたプロセスによって勝ち取られたものであり、そうした民主的なプロセスに由来する制度であるとは言えるでしょう。
以上を念頭に置けば、年齢制限の引き下げを要求するような民主的なプロセスが同様に巻き起こり、それが結果として年齢制限の引き下げに繋がるというシナリオは十分にあり得ることです。問題は、そうした要求を行おうとする強い意向が民衆の間にあるのか、ということです。それがないのであれば、結局は年齢の引き下げを特に必要とはしていないという民主的な意向が現在にまで反映されている、と捉えることもできてしまいます。

民主主義はすべて選挙や投票によって形成される、とする考えも大きな誤解なのですが、そうでなくても日本ではデモやロビー活動などといった政治活動に対してあまりいい印象を持たれていないように思いますね。結局、どういう形であれ、問題提起として声を上げないことには、民主的なプロセスなど起こりようもないものなのですが…。
Posted by T.MURACHI at 2011年11月14日 19:46
T.MURACHIさん.コメントありがとうございます.

「民主主義はすべて選挙や投票によって形成される、とする考えも大きな誤解なのですが」という点は同意なのですが,今回は世代別投票格差の是正を考えたいので,そこまでは広げないようにして考えたいです.

年齢による制限が民主主義において正当だといえる根拠について疑問を持ったのは,世代間の投票格差に関連性を感じたからです.少なくとも,生まれる前に施行された法律に対して,我々はどんなに反対したくても参政権を得るまで何もすることができません.生後,施行済みの法律に対して反対者を増やさないような教育を受けて育つという言い方もできるかもしれません.

ようやく参政権を得ても,その時点では自分たちは少数派です.その法律を「正」としてきた世代に対して数で負けてしまいます.しばらく時間が経過して同じ考えを持つ同世代が増えても,逆ピラミッド型の人口構造では有権者数の多い世代に対して劣勢となります.すなわち,国を支えている世代の意見は反映されにくいという構図は,この2つの要因により慢性化してしまうのです.いや,「施行済みの法律に対して反対者を増やさないような教育を受けて育つ」ということを含めれば3つの要因といえると思うのです.

昨日のFM Nack5の朝の番組で,ジャーナリストが「お年寄りの票の方が多いから,票がほしい政治家はお年寄りが喜ぶ政策ばかりをやるようになる」という指摘をしていました.まさに,世代間の投票格差の問題を指摘しているものだと思っています.

Posted by みっちぃ(管理人) at 2011年11月16日 00:26
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投票は負けた
Excerpt: でも,世代別投票格差を考えるきっかけになれば無駄ではなかったと思いたい.いろいろな権利や制度が年齢で区分されているのに,投票の際の1票の重みは年齢を問わず同じであることが平等,公平だとするいう根拠は何..
Weblog: おきらくプログラマー
Tracked: 2015-05-19 13:07